ご相談者「相続放棄さえすれば、親の借金を背負わずに済む」と思っていたのですが……手続きを間違えると、認められないことがあるって本当ですか?



はい、実際にあります。相続放棄が認められない原因の多くは、「3か月の期限切れ」「遺産に手をつけた」「家庭裁判所で手続きをしなかった」のいずれかに集約されます。7つの典型例と回避策を、一緒に確認していきましょう。



3か月って、意外と短いですね……。うっかり過ぎてしまいそうで不安です。



そうなんです。だからこそ、「いつ知ったか」を起点に早めに動くことが何より大切です。ポイントを一つずつ見ていきましょう。
こんにちは。富士市を拠点に活動する、司法書士事務所LINKの司法書士 山本真吾です。
「相続放棄さえすれば、親の借金を背負わずに済む」——そう思っていませんか。実は、手続きの進め方を間違えると相続放棄が認められず、思わぬ借金まで引き継いでしまうケースがあります。
結論から申し上げると、相続放棄が認められない原因の多くは、「相続の開始を知った日から3か月」という期限(熟慮期間)を過ぎてしまったか、故人(被相続人)の預金を引き出すなど遺産に手をつけてしまったか、家庭裁判所での手続きをせず、家族の話し合いだけで済ませてしまった——このいずれかに集約されます。本記事では、実際のご相談で多い「相続放棄が認められない7つの典型例」を、それぞれの回避策とあわせて解説します。特に多いのが、タイトルにも挙げた“3か月の期限”の落とし穴です。
- 相続放棄が認められない7つの典型例と、その回避策
- 実際にあった失敗のパターン(一般化した事例)
- 相続放棄にかかる費用(自分でやる場合/司法書士に依頼する場合)
- 3か月の期限を過ぎてしまったときの対処法
- 富士市・富士宮市の方はどこの家庭裁判所に申し立てるのか
大切なご家族を亡くされ、ただでさえ大変な時期に、慣れない手続きに直面されていることと思います。でも、どうぞ落ち着いてください。ポイントを一つずつ確認していけば、多くの場合は順を追って対応できます。
相続放棄とは?まず基本をおさらい
相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産を、プラスの財産(預金・不動産など)もマイナスの財産(借金・保証債務など)も含めて、すべて相続しないという意思表示のことです。借金の方が多い場合や、故人の財産に関わりたくない場合に選ばれる手続きです。
相続放棄の期限は「3か月」(民法915条1項)
まず一番大切なのが期限です。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行わなければなりません(民法915条1項)。この3か月間を「熟慮期間(じゅくりょきかん)」といいます。
「相続の開始を知った時」とは、多くの場合、被相続人が亡くなったことと、自分が相続人であることを知った日を指します。この期間を過ぎると、原則として相続放棄はできなくなります。
相続放棄は家庭裁判所への「申述」が必要(民法938条)
相続放棄は、家族の間で「私は相続しません」と口約束をするだけでは成立しません。家庭裁判所に「相続放棄申述書(そうぞくほうきしんじゅつしょ)」と戸籍などの書類を提出し、正式に手続きをする必要があります(民法938条)。
相続放棄が“認められない”7つの典型例と回避策
家庭裁判所に申し立てても相続放棄が認められない、あるいはそもそも相続放棄ができなくなってしまうのは、主に次の7つのパターンです。原因を大きく分けると「期限を過ぎた」「遺産に手をつけた(法定単純承認)」「家庭裁判所の手続きをしなかった」の3つに集約されます。実際のご相談で多い具体的な形に分けて、それぞれの回避策とあわせてご説明します。
- ① 3か月の期限(熟慮期間)を過ぎてしまった
- ② 故人の預金を引き出して使ってしまった
- ③ 不動産・自動車などの遺産を売却・名義変更した
- ④ 相続財産の中から借金や税金を支払った
- ⑤ 遺産を隠す・こっそり自分のものにした
- ⑥ 家庭裁判所を通さず、話し合いだけで済ませた
- ⑦ 一部だけ放棄しようとした(全部か/しないかの二択)
① 3か月の期限(熟慮期間)を過ぎてしまった
相続放棄には「相続の開始を知った日から3か月以内」という期限(熟慮期間)があります。「忙しくて後回しにしていた」「気づいたら3か月が過ぎていた」というのは、認められない原因として非常に多いパターンです。まさに“期限3か月の落とし穴”です。
② 故人の預金を引き出して使ってしまった(法定単純承認・民法921条1号)
故人の預金を引き出して使うと、「相続することを認めた(単純承認した)」とみなされ、その後は相続放棄ができなくなることがあります。これを法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)といいます(民法921条1号)。良かれと思って故人の口座からお金を動かした結果、放棄ができなくなる——これは本当に多いご相談です。
③ 不動産・自動車などの遺産を売却・名義変更した
預金だけでなく、不動産の売却、自動車の名義変更、貴金属の売却なども「財産の処分」にあたり、単純承認とみなされることがあります。
④ 相続財産の中から借金や税金を支払った
「督促が来たから」と、故人の預金など相続財産の中から借金や滞納した税金を支払ってしまうと、これも財産の処分とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。
⑤ 遺産を隠す・こっそり自分のものにした(民法921条3号)
相続放棄をしたあとであっても、遺産を隠したり、わざと財産目録に載せなかったり、私的に使い込んだりすると、単純承認をしたものとみなされ、放棄がなかったことになる場合があります(民法921条3号)。
⑥ 家庭裁判所を通さず、話し合い(遺産分割協議)だけで済ませた
「兄が全部相続することにした」と家族で話し合っただけでは、法律上の相続放棄にはなりません。家庭裁判所で正式に手続きをしていなければ、あなたは相続人のままで、被相続人の債権者から返済を求められれば支払う義務が残るおそれがあります。
⑦ 一部だけ放棄しようとした(全部か/しないかの二択)
「借金は放棄したいけれど、実家の土地だけはもらいたい」といった、財産を選んでの一部放棄はできません。相続放棄は、プラスもマイナスもすべて放棄するか/しないかの二択です。


【実例】相続放棄の失敗事例
ここでは、実際によくある失敗を、個人が特定されない形に一般化してご紹介します。
いずれも、「期限」と「家庭裁判所での正式な手続き」という基本を押さえていれば防げた失敗です。
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相続放棄の費用はいくら?自分でやる場合と司法書士に依頼する場合
相続放棄で気になるのが費用です。ここでは「ご自身で手続きする場合の実費」と「司法書士に依頼する場合」に分けて、一般的な目安をご説明します。
自分で手続きする場合の実費
ご自身で家庭裁判所に申し立てる場合、主にかかるのは次の実費です。
| 項目 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 相続放棄申述書に貼付(申述人1人につき) | 800円 |
| 連絡用の郵便切手 | 家庭裁判所からの書類送付用 | 110円×3枚(合計330円)※静岡家庭裁判所富士支部の場合 |
| 戸籍謄本・住民票除票など | 被相続人・申述人の分を市区町村で取得 | 1通あたり数百円(合計で数千円になることも) |
実費だけであれば、おおむね数千円程度に収まることが多いです。
司法書士に依頼した場合の報酬の目安と、依頼で防げる失敗
司法書士に依頼する場合は、上記の実費に加えて報酬がかかります。当事務所(司法書士事務所LINK)では、相続放棄の申述サポートを55,000円(税込)で承っています。なお、相続人の人数や必要な戸籍の範囲、3か月経過後の申立てかどうかなど、事案の内容によって費用が変わる場合があります。詳しくは「料金表」をご確認いただくか、お気軽にお見積りをご依頼ください。
費用がかかっても司法書士に依頼するメリットは、失敗のリスクを減らせる点にあります。期限から逆算したスケジュール管理、戸籍の収集、申述書の作成、そして後述する家庭裁判所からの「照会書」への回答について、専門家のサポートを受けられます。「一度の手続きで、できるだけ漏れなく済ませたい」という方には、依頼が向いています。
相続放棄は自分でやるべき?司法書士に頼むべき?
どちらが良いかは、ケースによって変わります。判断の目安として、両者を比較してみましょう。
| 比較項目 | ご自身で手続き | 司法書士に依頼 |
|---|---|---|
| 費用 | 実費のみ(数千円程度) | 実費+報酬55,000円(税込) |
| 3か月の期限管理 | ご自身で管理する必要がある | 期限から逆算して進行を管理 |
| 戸籍の収集 | ご自身で市区町村へ請求 | 司法書士が代わりに収集可能 |
| 申述書の作成 | ご自身で作成 | 司法書士が作成をサポート |
| 家庭裁判所からの照会書への回答 | ご自身で対応 | 回答内容について助言を受けられる |
| 相続人が多い・期限が迫るなど難しいケース | 判断に迷いやすい | 見通しを立てて対応しやすい |
「借金の有無がはっきりしない」「相続人が多く戸籍が複雑」「遠方に不動産がある」「期限が迫っている」——このような場合は、司法書士への依頼をご検討いただくとよいでしょう。
3か月の期限を過ぎたらどうなる?期限を延ばす方法はある?
「3か月を過ぎたら、もう相続放棄はできないの?」というご質問をよくいただきます。原則としては期限内の手続きが必要ですが、いくつかの手立てがあります。
熟慮期間の伸長の申立て(民法915条1項ただし書)
財産の調査に時間がかかり、3か月以内に相続放棄をするかどうか決められないという場合には、期限が来る前に家庭裁判所へ「熟慮期間の伸長(しんちょう)」を申し立てることができます(民法915条1項ただし書)。これが認められれば、判断のための期間を延ばせる場合があります。「借金がどれくらいあるか調べきれない」というときの選択肢の一つです。
例外的に3か月経過後でも認められる可能性があるケース
すでに3か月を過ぎてしまった場合でも、あきらめる必要はありません。たとえば、被相続人に借金がまったくないと信じており、そう信じることに相当な理由があったようなケースでは、「借金の存在を知った時」から改めて3か月を数える、という考え方が示された裁判例があります。
具体的には、亡くなってしばらく経ってから、突然、金融機関や役所から督促状が届いて初めて借金の存在を知った——といった場合です。こうした事情があるときは、期限を過ぎていても相続放棄が認められる可能性があります。


相続放棄は撤回できる?放棄後、借金はどうなる?
一度した相続放棄は、原則として撤回できません
家庭裁判所に受理された相続放棄は、原則として撤回(やり直し)できません(民法919条1項)。「放棄したあとで、実は価値のある財産が見つかった」という場合でも、やり直しは認められないのが原則です。そのため、放棄するかどうかは、財産と借金の状況をよく調べたうえで慎重に判断する必要があります(詐欺や強迫による場合など、一定のケースでは取消しが認められることがあります)。
借金は「次順位の相続人」に移ります
相続放棄をすると、その人ははじめから相続人でなかったものとして扱われます(民法939条)。この結果、相続権と借金は次順位の相続人へと移っていきます。
たとえば、お子さん(第1順位)が全員相続放棄をすると、次は被相続人の父母など(第2順位)へ、さらに父母もいない・放棄した場合は兄弟姉妹(第3順位)へと、相続権が移ります。
富士市・富士宮市の相続放棄はどこの家庭裁判所?
相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
富士市・富士宮市にお住まいだった方が亡くなった場合、管轄は静岡家庭裁判所富士支部です。ここに相続放棄申述書と戸籍などの必要書類を提出します。
なお、富士市・富士宮市では近年、相続放棄を検討される方が増えています。その背景については、次の記事でも触れていますので、あわせてご覧ください。


よくある質問(Q&A)
- 家族の話し合いと相続放棄は違うのですか?
-
はい、まったく別のものです。家族で「相続しない」と決めても、それは法律上の相続放棄にはなりません。相続放棄には家庭裁判所での申述手続きが必要です。話し合いだけでは、債権者から返済を求められた際に相続人として扱われるおそれがあります。
- 3か月を過ぎてしまいました。もう無理でしょうか?
-
原則は3か月以内ですが、あきらめる必要はありません。借金の存在を後から知ったなど、相当な理由がある場合には、期限経過後でも認められる可能性があります。個別の事情によりますので、早めにご相談ください。
- 私が相続放棄すると、家族に借金が回ってしまいますか?
-
相続放棄をすると、相続権と借金は次順位の相続人(父母、いなければ兄弟姉妹など)に移ります。ご自身が放棄する場合は、次に相続人となる親族にも知らせておくと安心です。
- 遠方に住んでいても手続きできますか?
-
はい、可能です。相続放棄は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所(富士市・富士宮市の場合は静岡家庭裁判所富士支部)に対して行いますが、郵送での対応ができます。司法書士が、遠方にお住まいの方の戸籍収集や申述書の作成を代行・サポートすることも可能です。
司法書士に相談すべきタイミング
次のような場合は、早めに専門家へご相談いただくことをおすすめします。
- 故人に借金があるかどうか、はっきりわからない
- プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか判断がつかない
- 相続人が多く、戸籍集めや連絡が複雑になりそう
- 遠方に不動産があり、自分で手続きするのが難しい
- すでに3か月が迫っている、または過ぎてしまった
まとめ:早めの行動が大切です
相続放棄が認められない原因の大半は、「3か月の期限を過ぎた」か「遺産に手をつけてしまった」か「家庭裁判所での手続きをしていなかった」という基本的なところにあります。逆に言えば、この記事で挙げた7つの典型例と回避策を押さえて早めに動けば、失敗の多くは防げます。
そして、たとえ期限を過ぎてしまった場合でも、事情によっては認められる可能性があります。「もう手遅れかもしれない」と自己判断であきらめてしまう前に、まずはご相談ください。
司法書士事務所LINKでは、富士市・富士宮市を中心に、相続放棄のご相談を承っています。初回のご相談は無料です。どうぞお気軽にお声がけください。




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