富士市でも増加する空き家問題―認知症による資産凍結が原因?

富士市での空き家問題 成年後見と家族信託

静岡県富士市においても、空き家の増加は深刻な社会問題となっています。
総務省の調査によれば、全国の空き家率は年々上昇を続けており、富士市も例外ではありません。
特に高齢化が進む地域では、親が施設に入所した後、自宅が放置されてしまうケースが後を絶ちません

しかし、なぜ親が施設に入ったのに、自宅を売却したり賃貸に出したりできないのでしょうか。
その理由の一つに「認知症による資産凍結」という問題があります。
今回は認知症による資産凍結に関して対応策なども踏まえて記事にしましたので、見ていきましょう。

この記事を書いた人 
  • 資格
    司法書士・宅地建物取引士・家族信託専門士・簿記2級・FP
  • 経歴
    静岡県富士市出身。明治大学卒業。大学2年時より司法書士の勉強をはじめ、体育会弓道部の主将を務めながら勉強を積み重ね、平成23年司法書士試験に合格。平成24年富士市にて司法書士事務所を開業
  • 心情
    「法律を知らないで損をする人を少しでも減らしたい」を心情に、開業以来1200件以上の相談を行ってきた。
司法書士
山本真吾
目次

認知症になると不動産が売れない?資産凍結のリスク

認知症が進行し、本人の判断能力が低下すると、法律上その方は「意思能力がない」と判断される可能性があります。
不動産の売買契約は、契約の内容を理解し、自分の意思で判断できることが前提です。
そのため、認知症が進行した親御さんの不動産は、たとえ子どもであっても勝手に売却することはできません。

その結果、以下のような問題が発生します。

  • 施設入所費用を捻出するために自宅を売りたいが売れない
  • 空き家となった自宅の維持管理費(固定資産税、光熱費、修繕費)がかかり続ける
  • 老朽化が進み、近隣トラブルの原因になる
  • 相続が発生するまで何もできず、家族が疲弊する

こうした事態を避けるためには、親御さんが元気なうちに対策を講じておく必要があります。その代表的な方法が成年後見制度」と家族信託」です。

成年後見制度による空き家対策

成年後見制度とは、認知症や知的障害などで判断能力が不十分な方を、法律的に保護・支援する制度です。
家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人に代わって財産管理や契約行為を行います。

成年後見制度で不動産を売却できるケース

成年後見人は、本人の財産を管理する権限を持っていますが、不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要です(※居住用不動産の場合)。
裁判所は、本人の利益を最優先に考えるため、以下のような場合には売却が認められる可能性があります。

  • 施設入所費用の支払いが困難で、不動産を売却する以外に方法がない
  • 本人が今後自宅に戻る見込みがない
  • 売却代金が本人の生活や医療・介護に充てられる

ただし、成年後見制度には以下のような注意点もあります。

メリットデメリット・注意点
家庭裁判所の監督下で適正な財産管理が行われる毎月の後見人報酬が発生する(専門職後見人の場合)
本人の権利がしっかり保護される家族が自由に財産を使えなくなる
法的に認められた制度で信頼性が高い不動産売却には裁判所の許可が必要で時間がかかる
本人が亡くなるまで継続的なサポートが受けられる一度始めると本人が亡くなるまで続く

※令和8年2月8日現在の制度に基づく情報です。

成年後見制度は利用する点で、まだまだ不自由な点も多くあります。
そこで、成年後見制度を利用しなくてもいいようにするための方法の一つに、家族信託というものがあるので、ここで解説します。

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家族信託による空き家対策

家族信託は、元気なうちに財産を信頼できる家族に託し、管理・運用・処分を任せる仕組みです。認知症になる前に家族信託契約を結んでおけば、認知症になった後でも、受託者(財産を託された家族)の判断で不動産の売却や賃貸が可能になります。

家族信託の仕組み

家族信託では、以下の3者が登場します。

  • 委託者:財産を持っている人(例:父親)
  • 受託者:財産を託される人(例:長男)
  • 受益者:財産から生じる利益を受け取る人(通常は委託者本人)

たとえば、父親が長男に自宅と預金を信託した場合、長男は「受託者」として、父親(委託者兼受益者)のために財産を管理します。父親が認知症になっても、長男の判断で自宅を売却したり、賃貸に出したりできるため、空き家になるリスクを防げます。

家族信託のメリット(ざっくり)

メリット成年後見との違い
認知症になる前に対策できる成年後見は認知症発症後の制度
家庭裁判所の許可なく不動産を売却できる成年後見では裁判所の許可が必要
柔軟な財産管理が可能(例:賃貸経営の継続)成年後見は本人の財産を減らさない方針が基本
信託契約の内容を自由に設計できる成年後見は法律で決められた枠組み
月々の報酬が発生しない(専門家への設計報酬は初回のみ)成年後見は継続的に報酬が発生する可能性

※令和8年2月8日現在の制度に基づく情報です。

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【事例】富士市Aさん(78歳)のケース

富士市在住のAさん(78歳・男性)は、自宅と賃貸アパートを所有していました。奥様は数年前に他界し、現在は一人暮らし。長男は市内で働いており、将来的には施設入所も視野に入れていました。次男も同様に市内で働いており、兄弟仲は良好です。

ある日、Aさんが軽度の認知症と診断されました。長男は「このままでは父の不動産が凍結されてしまう」と危機感を抱き、当事務所にご相談にいらっしゃいました。

当事務所のご提案

Aさんはまだ軽度の認知症であり、契約内容を理解する能力が残っていたため、家族信託の利用をご提案しました。
長男を受託者として、自宅と賃貸アパートを信託財産とする契約を結びました。

任意後見という選択肢もありましたが、ご本人様のご要望が賃貸アパートの管理と自宅の売却をメインを置かれていたことや、次男の方もおり、第二受託者として指定することが可能だったため、家族信託の利用をご提案しました。

結果

その後、Aさんの認知症が進行し施設入所が必要になりましたが、長男の判断で自宅を売却し、施設費用に充てることができました。また、賃貸アパートは引き続き長男が管理し、家賃収入もAさんの介護費用として活用できています。
長男に万が一があった場合は、すぐに次男が第二受託者として活用できるよう準備もしておりました。万が一何があるかわからないので、このような対策をすることも家族信託では重要です。

もし対策を何にもしていなかった場合

成年後見の申立てをし、裁判所の許可を得て売却するという複雑な手続きが必要でした。家族信託を活用したことで、スムーズに資産を活用でき、空き家化を防ぐことができました。

成年後見と家族信託、どちらを選ぶべきか?

それぞれの制度には一長一短があります。以下の表を参考に、ご家族の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
また今回紹介しなかった、任意後見という制度も、認知症対策には有用です。

司法書士

どの制度を利用するかについては、各ご家族の状況やご希望に沿って選択することが重要で、場合によっては各制度の併用もご提案することがあります。

項目成年後見家族信託
対策のタイミング認知症発症後も利用可能元気なうちに契約が必要
不動産売却裁判所の許可が必要受託者の判断で可能
柔軟性本人の財産保全が最優先契約内容に応じて柔軟に対応可能
継続コスト月々の後見人報酬(専門職の場合)設計時の報酬のみ(継続報酬なし)
適している人すでに認知症が進行している/身寄りがない元気なうちに対策したい/不動産を柔軟に活用したい

※令和8年2月8日現在の制度に基づく情報です。

まとめ:空き家を生まない対策は、元気なうちに

富士市においても、高齢化と認知症の増加に伴い、空き家問題は今後さらに深刻化していくと予想されます。親御さんが施設に入所した後、自宅が空き家となり、売却も賃貸もできずに放置されるケースは決して珍しくありません。

こうした事態を防ぐためには、元気なうちに「もしも」に備えた対策を講じることが何よりも重要です。成年後見制度と家族信託は、いずれも有効な手段ですが、それぞれにメリット・デメリットがあります。

当事務所は、富士市で唯一家族信託を積極的に行っている司法書士事務所です(令和8年2月8日現在)。また、司法書士である私自身が成年後見業務にも積極的に携わっており、両制度に精通しております。

「親の自宅が空き家になりそうで心配」「認知症になる前に対策しておきたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。初回相談は無料です。富士市・富士宮市は出張相談も無料で承ります。

空き家を生まない対策は、「今」始めることが大切です。ご家族の大切な財産を守るため、私たちがお手伝いいたします。

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